ギリシャ神話に登場する、
英雄ヘラクレスと戦った怪物。
日本では他に
ラテン語読みからくるヒドラや、
英語読みのハイドラと呼ばれることもあります。
《 エンドクレジットより─》
その容姿は
巨大な胴体に多数の首
(9つや100とする説もある)を持つ大蛇の姿─手足や翼が描かれたものもあり、
首は切断しても直ぐに新しく生えてくる(神話では1ヵ所から2本生える)。
その再生は、
焼くことで不可能に─
神話最後では
ヘラクレスによって巨大な岩の下敷きにされた…
このヒュドラの
どれほど世に浸透しているかというと、
淡水産の小動物で、
体をいくつかに切っても、それぞれが完全に再生する能力を持つクラゲの仲間がおり、
この神話からヒドラと命名された生物が存在しています。
─この映画のエンドクレジット内にも
モスラを暗示する蛾の成虫とともに、
さりげなく登場
ギリシャ神話自体が
昔から題材として一般映画になり、
アレンジも含めていくつも製作され
全世界で公開─
日本でも
子供向けの読み物がいくつもあり、
ヒュドラ(ヒドラ)自体が神話以外にも
独立したキャラクターとして映画に登場したり、
クライマックスとなる
最後のボストンでの戦いで、
バーニング状態のゴジラによる核パルス攻撃で他の首は焼かれても、
ボディに中央の首だけが残り…
完全消滅か、あるいは神話のように
ガレキの下か…と思いや、
埋もれた中から─
伝説を越えた完全不死なのか?と
「さすがヒュドラ、ヤベーわコイツ」
…しかし、その首はさらにガレキの下から現れたゴジラに咥えられていて、
必死に逃れようとしていた。
ゴジラは、
苦しみ断末魔を上げるギドラをそのまま
貪り喰うかのように
放射能火炎で跡形もなく完全焼き切る…
偽りの王、伝説の不死身獣も
真の怪獣王の無慈悲な攻撃に終止符を打たれる…
まさかの逆転たたみかけ演出、
「ゴジラが敵じゃなくて本当に良かった」
─こうしたヒュドラ伝説をなぞって行くストーリーで、
不死身・最強の敵をアピール。
伝説を知らない人も後から知れば
知識欲を刺激し、新たな楽しみを見出だせるシカケでした。
そしてそのギドラ(ヒュドラ)伝説を上書きする
怪獣王ゴジラの強さと、
映画のテーマのひとつでもある“ガイア理論”的行動
(※ モンスターバースシリーズとガイア理論については、以下で取り上げています。
─そのためには我欲に走る人類も
敵となりうるという、チェン博士の暗示…
さて、今回の
ギドラ=ヒュドラ設定ですが、
これ、西洋思想からの
唐突な馴染みのない引用ではなく、
そもそも昔から
オリジナルの東宝キングギドラのデザインモチーフのひとつに、
このヒュドラも引用されていると言われており、
『キング・オブ・モンスターズ』映画公開前までウラ設定的に示されてきたプロットが、
まさかの映画本編内で
物語の重要なカギであったのだと明かされ、
オリジナル設定を知るマニアにしてみれば、
裏設定を堂々表設定に用い、
往年のファン心理をくすぐられた瞬間でした。
─字数制限があるため、
このようにはならないでしょうが。
このヒュドラ ルーツネタ、
最近発売された双葉社スーパームック
『バトル・オブ・キングギドラ』
19ページに
“初代キングギドラは、ヤマタノオロチやヒュドラをモチーフにしたとされる。”
と、ページ写真とは関係ない一文が
話題のひとつとして添え書きされています。
このように当映画の魅力は
単に派手なビジュアルのみでなく、
ファン心理をくすぐるオリジナルを生かした設定と、
丁寧なラストバトルへの伏線を兼ねた謎の解き明かし
後に別に記しますが、多くのSF小説や映画のリスペクト…でもありまして
このヒュドラのくだりなど、
まさにオリジナル キングギドラの
あらましを熟知した手練れの者の作による、
凝りに凝り…練りに練られた
怒涛の出玉大放出作劇!
オリジナルへの深い敬意と
ホンモノの愛情が、
ささやくようにッ!
語られた、スリリングでアツいシーン…
これこそが
リスペクトォォーー!!!
と個人的には思いましてえー!♪
普 段 か ら
我こそがオリジナル
だ と 叫 ん で る
この国の配給会社さんが、
丁 寧 に 解 説 す べ き
イースターエッグ!
で す よ ね ぇ ~ ッ !
日本の公式さぁぁぁん !!!?(←期待で一気にまくし立てるw)
ですよ…ね?…
ア…レ?……
あの・・・・
もしも~し・・・・・日本の・・さぁ~ん?
日本の公式サンがナゼ沈黙してるのか、
①に載せた拙い私訳と
日本語字幕・吹替訳を比較掲載してみる‥‥‥
ダイアン・フォスター大佐
“This oxygen destroyer,
why wasn't Monster Zero affected? ”
「なぜ、モンスター・ゼロには
オキシジェン・デストロイヤーが効かなかったのか?」
字幕 オキシジェン・デストロイヤーで
なぜ殺せなかった?
吹替 モンスター・ゼロにはなぜ
オキシジェン・デストロイヤーが効かなかった?
ジャクソン・バーンズ上級兵曹長
“I mean, I'm no scientist,
but I think it has something to do.”
「学者さんのようにウマく言えませんが、
ちぎれたクソアタマがまた生えるくらいですから」
字幕 モンスター・ゼロの頭が
生え替わったからでは?
吹替 素人考えですが、
首が生え替わった事と何か関係あるかと
リック・スタントン博士
“Well, I've never seen anything like it.
It violates everything we know
about the natural order.”
「いやぁ、あんなの見たことがない。
大自然の法則を無視してるだろこれ」
字幕 あんなの初めて見た
自然の秩序に反してる
吹替 あんなのは見たこともない。
自然界の秩序に反してる。ありえない
チェン博士
“Unless he's not part
of the natural order.”
「大自然の法則には属してないからよ」
字幕 自然の一部ではないのかも
吹替 自然界の秩序に属していなかったら?
芹沢猪四郎博士
“What do you mean?”
「どういう意味だ?」
字幕 つまり?
吹替 どういう意味だ?
チェン博士
“I was able to piece this together.”
「この言い伝えがつながるんです」
字幕 神話から分かったの
吹替 神話から手がかりを得たんです
サム・コールマン博士
“Well, he looks vaguely familiar.”
「あれ、なんか見たことあるような」
字幕 これは奴にそっくりだ
吹替 なんだ? どことなく見覚えあるような
チェン博士
“It tells of a great dragon
who fell from the stars.”
「星から落ちてきた偉大なる龍と云われてるの」
字幕 星から落ちてきた偉大なる龍よ
吹替 大いなる龍が星から降ってきた神話です
“A Hydra whose storm swallowed both men and gods alike.”
「嵐を巻き起こし
人や神々をも呑み込んだ(伝説の)ヒュドラよ」
字幕 この龍が起こす嵐は
人も神も のみこむ
吹替 人間も神々も
この怪物の起こす嵐に呑み込まれた
・・・・
─上記の日本語字幕版及び日本語吹替版を観た日本の観客は、いかなる印象を持つでしょう?
“dragon” も “A Hydra” も、
字幕版はすべて「龍」。
日本語版ではヒュドラとは
一言も表現されず。
当時、自分は字幕版主体で観賞していましたが、
このやり取りの前に、
チェン博士が
東洋の龍の画像を示しながらその概念について語るのを見ていたため(下のシーン画像)、
見事に字幕に釣られ、
お話しのイミよく解んないんだけど…さ
なんだかずいぶん
東洋の龍びいきだなぁ?
(やはり資本のかんけーかよ?
んで、これとギドラが何か つながりが??)
と、アタマがボンヤリ‥‥
それが数回、劇場で観ていると、
耳に “A Hydra─”
の単語を聞き取れるようになってきて…
それを頼りに、上記のように色々調べて
日本ではヒュドラという語を無視した翻訳をしている
─という状況を理解した時、
心に沸々と涌き出た思いが↓
え?
いや このシーン↑は
ただ目がかゆいだけですけど
それがなにか?!(怒)
─吹替版での “A Hydra” の
「この怪物」訳なんかは
「どの怪物?」
ですしおすし…
「ヒュドラ」の語が転じて
ただの「龍」や「怪物」となったら、
首再生のナゾ解きも、後半の展開も全てイミフなモノに─
ちなみに自分は昨年、日本での年末のBlu-ray発売が待ちきれなくて、夏発売の海外版を11月に購入し
それには英語の他に、
イタリア、 スペイン、 ブルガリア、 クロアチア、 チェコ、 デンマーク、 フィンランド、 ハンガリー、 ノルウェー、 ポーランド、 ルーマニア、 スロバキア、 スウェーデンの各字幕が付いていたのですが
全てそれぞれ、各国のヒュドラに当てはまる単語で訳されていました!
…って当たり前か(爆)
この件、翻訳者個人がどうではなく、
日本配給会社がどのような認識でこんな訳を許可し、その後の対応をしているのか?─
もちろん、劇場販売のパンフレットでもヒュドラには一切触れてませんし、
写真提供・監修もしてるであろう、
先に紹介した双葉社スーパームック
『バトル・オブ・キングギドラ』の
「キング・オブ・ザ・モンスターズ」欄にも全く記述はなく、
ネット検索で出てきたのは
映画情報ウエブサイト『シネマトゥデイ』での、監督インタビューと いくつかの伝説や神話が元になっている─という裏話的扱いのみ。
そして、以前一般の方で似たようなコトを書いてるのを見たことあるけど…
映画解説のプロが↓こんな風に
ゴジラが地球の守護神と呼ばれる設定は平成ガメラ3部作を彷彿。家族を殺され、ゴジラを恨む主人公は『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(99)。斬られたキングギドラの首が再生するのはギャオスの足再生オマージュか。
“他の追随をゆるさない、映画エンターテインメントのNo.1雑誌 (KADOKAWA アド メディアガイド より)”
という触れ込みの「DVD&動画配信でーた」スタッフ執筆『MOVIE WALKER PRESS』2019/12/19記事より
プロの方が、こんな解釈を公的に拡散する始末。。。
(…それともまさか自社コンテンツへの誘導?)
ギ ャ オ ス の 足
再 生 オ マ ー ジ ュ !!
そーかこれかあー(棒)
というコトはつまり。。。
生えるのはギャオスの…?
こうなるんだった?(笑)
これはモナークも
びっくりwww
ギドラも
「ぎゃおー!と鳴くから…」と
泣いてしまうレベル。。。
そして
ジョナさんが、こんなトコにも…
あ、これが実は撮影しなかった幻のエンディングシーンだったのだろうかっ?
すげ~イースターエッグだわwww
…等と云うヒトが出る恐れが。。。
(あ、オレかw)
そうだ!こんな第2第3のオレが出るかもwww(←これはイケないッ!)
こういう勘違いを産むかもな訳を提供する
日本の配給会社って、何に全力尽くしてるのかなぁ?
我々はこうした全力を
お金払って鑑賞し、知識を与えられ、
知ったように批評して悦に入っているワケです(笑)
こうした以前も書いた
日本での残念訴求─
まだ他にも…続きはまたしばらく後に。